NOZOMIO 吉祥寺
[東京都武蔵野市/収益マンション]
設計・監理:合同会社KADA、合同会社Dugout
施工:鈴与三和建物株式会社
植栽監修:株式会社woodsmart
都心と郊外の魅力が共存する吉祥寺の街は、個人店や大型店などが混在する賑やかな商業地から閑静な住宅街まで、緩やかなグラデーションを描きながら密度感が変化しており、その情景が人々に住み心地の良い感覚を与えています。
NOZOMIO 吉祥寺が位置する立地は、街を横断する都市計画道路によって、周辺に広がる緑豊かな住宅街とは異なる建築条件を持ち環境差に面していました。この敷地に総戸数28戸のワンルーム型集合住宅を計画するにあたり、密度感の格差によって街との繋がりに綻びが生じぬよう、周辺一帯に広がる住宅との地域構造を考慮する必要がありました。
そこで、周辺住宅街の庭と建築の粗密感を平面的視点と立体的視点で分析し、建築と植栽の関係性が等価となるよう組み立てた中密度な建築としました。この繊細で緻密な創意工夫により、住まい手が自然を身近に感じ、街との調和も図られるよう趣向を凝らしています。
建物と植栽(庭)の関係性を
等価に捉えた
中密度な設計
Design
敷地境界に対して縦軸を真北に取り、建物の輪郭をひだ状に折り曲げ余白空間を創出することで、敷地に対して雁行した建物配置としました。
有機的な形状によって建物を巡るように創出された余白空間を植栽で彩ることで、敷地全体に点在する小さな庭を作り出し、建物と植栽の関係性を等価に組み立てました。
また、断面と外被の形態操作により、上下階にずれを持たせ平面的雁行と立体的雁行が織り交ざる陰影のある形態を作り出しました。
さらに、地盤面から0.6m下げ、階高を2.55mとすることで、地上から高さ10m以下に抑えた4 層のボリュームは、街との親和性を持つ中密度なスケールの建築となりました。
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建築軸を真北に向けることで自然環境と向き合い、周辺環境(視線)の交錯に配慮
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建築を折り曲げるように周辺環境との間に余白を創出
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余白空間に寄り添うように植栽を設けることで「小さな庭」を敷地全体に展開
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上下階の建築輪郭をずらすことで、建築の奥行き・陰影を建物全体に展開
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4層ボリュームを戸建住宅街に調和させるため、半地下および階高2.55mを採用し、周辺環境と視線がずれるよう計画
五感で季節の移ろいを
感じられる
植栽計画
Planting
地域の人々ともセッションを重ねた植栽計画は、全て常緑樹を選定。柔らかい樹形や軸のある樹形、深緑やシルバーグリーンの色彩、また、春夏秋冬いつでも花が咲いているよう樹種を選定しました。
樹木の色味や形態に加えて花や香りなど五感で四季折々の表情を楽しめるものとし、地域の生態系ネットワークのハブとなるような植栽計画としています。
- 春3~5月
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ミモザ
フェイジョア
- 夏6~8月
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シルバープリペット
ブラシノキ
- 秋9~11月
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リンボク
ホソバヒイラギナンテン
- 冬12~2月
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ダイトウチャ
ローズマリー
※植栽参考写真は、イメージで実際とは異なります。
緑に包まれた
平面計画
Floor Plan
吉祥寺駅から少し離れた緑豊かな戸建て住宅街に計画したワンルーム型集合住宅。
街との境界に空間を創出できるよう建物をひだ状に折れ曲った輪郭とし、余剰空間には様々な植栽が彩る庭を配しました。
敷地を巡る植栽、大開口による開放感と立体的雁行による内包感、使途の変移に呼応する住空間、多角的バランスの取れた建築は、快適な生活拠点を生み出しています。
「植住一体」な暮らしの風景
エコ・コンシャスな暮らし
地域に根付く佇まい
身近に緑を感じる暮らし
木洩れ日に包まれる暮らし
審査員の評価コメント
ワンルーム型集合住宅でありながら、豊かな外部空間と植栽が設けられており、住空間として優れた環境が形成できている点は高く評価できる。
雁行型の平面計画を採用することで街との距離を確保し、外部空間が街と住まいの緩衝帯として機能していること、1階床レベルを600mm下げたことで歩行者と住人の視線をずらし、無理なく開放的な住戸が実現できたことなど、これら設計上の様々な工夫が、住まいの豊かさにつながっており、設計者のきめ細やかな配慮が感じられる建築である。
戸建て住宅街における若年単身者向けワンルーム集合住宅は、ともすれば近隣から疎まれる存在になりがちであるが、この集合住宅であれば、近隣とより良い関係性が築いていけるのではないかと思う。
豊かな植栽や外部空間が今後もより良い状態で維持されることを期待したい。